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HDL-AAX2 シャットダウンスクリプト
自宅NASのIO-DATA HDL-AAX2ですが、リモートでシャットダウンする必要があり、方法を検討しました。少し古い機種のHDL2-Aのシャットダウンスクリプトが見つかったのですが、それをそのまま適用することはできなかったので、少し改造して使うことにしました。
出来上がったのが以下のRubyスクリプトです。
mechanizeというwebの自動巡回を可能とするgem(クローラ)を使うことで実現しています。少し古いRuby(< 2.6.0)でも簡潔に書けるよう、Kernel#thenがない場合に備えて自己定義しています(古いRubyに最新の機能を入れ込むbackports gemのKernel#yield_selfのコードを参考にしました)。
曜日を求める(8bit範囲で)
マイコンを使って年月日から曜日を求めたいケースがありました。普通の環境ならC言語を前提とすれば<time.h>にあるmktime関数とlocaltime関数を使うことで実現できます。
裏では曜日を求めるアルゴリズム(色々あります)のどれかを使って求めていると思います。
今回は対象がマイコンということもあり、機能を限定することでコンパクトなアルゴリズムに改変してみました。
sakamoto's methodを元にしました。日時範囲はGPS時刻を前提とすることで1980年以降とし、また2099年まで使えればよい割り切りをしています。すると、うるう年の計算が100で割り切れて400で割り切れない年を考慮する必要がなくなり、簡略化されました。また型を最小のunsigned charで統一してみました。
検証はRubyのRspecでやってみています。
上記CコードとRubyでのDate#wdayとの一致を見ています。なおテストの実装にあたっては、RubyInlineを使ってRubyの中でC言語コードを直接扱ってみました。
Assisted GPS (A-GPS)クライアントの実装
GPS関係の処理をRubyから使えるようにしたgps_pvt gemは色々なストリームやファイル、シリアルポート(GPSデバイス直結)から情報を読み込めるようにしてあります。このたびv0.10で初期測位を早めるためのAssisted GPS (A-GPS)に対応しました。単独測位をするのであればgemをインストール後に以下のコマンドで例えばAndroidなどて使われているGoogleのサーバから情報を取得してA-GPSを利用できます。
生データに近い物が見たければ、以下のコマンドでJSON形式でエフェメリス等が得られます。
エフェメリス(軌道情報)を読み込む程度なので実装は簡単かなと思って始めたのですが、結果的に色々調べる必要がありました。羅列ですが、調べたものを残しておこうと思います。
- SUPL
- Secure user plane location。A-GPSの事実上の標準実装(という理解)。プロトコル名としてはUserPlane Location Protocol(ULP)。表面を覆っているのがULPで、中身のペイロードにはLPPやRRLPといった別のプロトコルが使われる。実装例が少ない中、tajuma/suplやgoogle/supl-clientが参考になった。
- LPP (TS 37.355)
- LTE Positioning Protocol。エフェメリスなどの定義がある。GPS以外の定義もしっかりされている。
- RRLP (TS 44.031)
- Radio Resource Location service Protocol。LPP同様エフェメリスなどの定義があるが古めの規格。プロトコルとしてはGPS以外も使えそうに見えるが、GoogleのSUPLサーバに問い合わせてもGPSのエフェメリスしかくれない模様。
- ASN.1 (X.680)
- Abstract Syntax Notation One。ULP, LPP, RRLPなどの文法は全てこれで書かれている。Rubyにも主にSSL証明書をパースする目的でOpenSSL::ASN1の実装があるが、機能が限定的で今回は使わなかった。代わりにRubyの構文解析ツールであるRaccを使う前提で文法asn1.yを定義し、asn.1形式の文法ファイルをパースできるようにした。asn.1をasn1.y(から作ったRubyコード)で事前にJSONに変換(upl.json.gz)して本番では利用している(rake upl.json)。Samayou Oharikuiの和文解説やGusztáv ADAMISさん(ERICSSON)のスライド(PDF)がとても参考になった。OSS NokalvaやObjective Systemsも参考にした。
- PER (X.691)
- Packed Encoding Rules。SUPLではバイナリで情報がやり取りされるが、その時のエンコーディングルールにBasic Unaligned PERが指定されている。前述の参考資料にも解説あり。RSpecで(asn.1から変換した)JSONとPER間のテストを書いて検証した。
最後におまけとなりますが、SUPLサーバに対しては携帯のようにIMEIを渡すわけではなく、問い合わせホストのGlobal IPを渡すようにしてみています。
HDL-AAX2の修理
自宅NASのIO-DATA HDL-AAX2から少し異音がしていたので確認してみたところ、ファンから異音が出ていました。そこで修理をしてみることにしました。
元々ついていたファンはSunonのHA40101V4-1Q01C-F99というファンでした。残念ながら全く同じ型番のファンを見つけることができませんでしたが、DC12Vで40mm角の10mm厚、回転パルス出力付きのものであれば交換可能だろうということで、違うものに変えてみました。選んだのはAINEX CFY-40SAです。
ぴったりはまりました。コネクタだけは加工する必要があって、秋月電子や千石電商などで買えるJST XHシリーズの3ピンコネクタ(ハウジング:XHP-3, コンタクト:SXH-001T-P0.6)に付け替えています。
ExcelでMarkdownの表を編集
先日boost::math::distributionsのRuby gemを公開しましたが、その時にboostのバージョンによって含まれている分布の違いの一覧表を作りました。Markdownで作ったのですが、編集は元情報のExcelでやって、そこに便利なExcelアドインCopyToMarkdownAddInでMarkdownの表形式にコピペ(エクスポート)をしていました。逆コピペ(Excelにインポート)もできる優れものです。便利なツールがあって助かりました。
またハイパーリンクを付けても機能するようにしたかっので、少し改修して使いました。現在PRしたので、もしかしたらそのうちまーどされるかもしれません。
Rubyで確率分布の性質を求めるgem
Rubyで確率分布の性質、例えば標準偏差が1、平均が0の正規分布において50%点はどこかというと0、といったことを求められるようにgemを作ってみました。boost_distributionsというgemで、名前が示す通りC++の標準的なライブラリであるboostの1パッケージとして確率分布を扱っているboost::math::distributionsを呼び出せるようにしてみました。
Githubのレポジトリでコードを公開しています。インストール方法(gemの前にboost本体のインストールが必要)や、使い方概要もそちらご参照ください。
実は2020年に書いていたコードがようやくgem化された形になります。gem化するにあたって、一緒にコンパイルするboostのバージョン依存性を吸収するなどの細工(ラッパーC++コードを生成するためのswigインターフェイスファイル BoostDistributions.i参照)をしています。
Windowsのcygwin/MSYS2/RでSSL証明書問題の解消
ネットワークの制限の関係で、中間者傍受を許容する設定での運用になっていたとします。そこでのWindowsの設定は、いわゆるオレオレ証明書を『信頼されたルート証明機関』に配置をすることになります。Windowsと親和性が高いアプリでしたら、ほぼそれですべて解決するのですが、残念ながらそうでないものがいくつかありましたので、その解決方法をまとめておきたいと思います。
Cygwin
wgetとかcurlをやっているときにSSLがどうたらというエラーを吐いて死ぬので気が付きます。stack overflowに書いてあるやり方でうまくいきます。
$ update-ca-trust # 加えたオレオレ証明書の内容を証明書溜り(/etc/pki/ca-trust/extracted/openssl)に追加
もしupdate-ca-trustがなければca-certificatesを導入しましょう。
MSYS2
pacmanが文句を言ってくるところで気が付きました。解消方法はcygwinと同じです。MSYS2のFAQにも解説があります。
R
新しいpackageを導入しようとしたところでミラーの選択をはじめに問われるのですが、そこでインターネットが不通になっている旨 URL 'https://cran.r-project.org/CRAN_mirrors.csv': status was 'SSL connect error' という形でエラーが表示されることが気が付きました。R-3.6からR-4.2に切り替えたところでこのようなエラーが出始めて大変困っていました。これはデフォルトのダウンロード方法()であったwininetが非推奨になり、libcurlへと変わったために起きたようです。
回避方法としてはlibcurlにおとなしくなってもらいます。download.file()関数のヘルプのSecure URLsの項目に詳しい説明がありました(l最新版へのリンクなのでそのうち内容が変わってしまうかもです)。結果的にはibcurlの動作モード(libcurlVersion()で取得できる)がSchannel(OS提供の証明書情報を参照)で動いていたので本来なら問題は生じないはずなのですが、オレオレ証明書が失効リストに引っかかってしまってたようで、curlを--ssl-no-revokeで動かす必要があることがわかりました。結果、Rとしては環境変数の設定として
とすれば動作するようになりました。毎回コマンドを打ち込むのは面倒なので、起動時に設定されるよう.Rprofileの.Firstに書いておくとよいと思います。
また、あまり良い方法ではないですが、非推奨のwininetに戻すこともできます。