GPSチップアンテナ(LNA付き)

以前、sparkfunで販売されているGPSチップアンテナの記事を書きました。しかし結局パッシブアンテナ(アンプが入っていない素のままのアンテナ)の形態では、手持ちのGPS受信機u-blox LEA-4Tでは全く受からなかったので、今回はそこにアンプを足してみましたという内容です。
内容にあまり期待されてしまうと申し訳ないので、先に結論を言ってしまうと、残念ながら今回も実用にはなりませんでした。人柱レポートだと思ってくださると幸いです。

今回新たに設計したのは、前回の素のままアンテナに、LNA(Low Noise Amplifier)としてMaxim MAX2641を足したものです。例によってEagle回路図レイアウトをおいておきます。

gps_chip_antenna_brd_revC_top.gifgps_chip_antenna_brd_revC_bottom.gif
IC1がLNA。

高周波部品になると、大体の製品においてインピーダンスマッチングをとるために従うべき推奨回路というのがあります。MAX2641にも例外にもれず推奨回路があるのですが、残念ながら多くの小型GPS受信機が採用している、信号線でアンテナ内蔵アンプへの給電を行う形態には対応していなかった(DCブロックがされていない)ので、LNAの出力後のマッチング回路はスミスチャートを使って自己設計しました。その際に利用したスミスチャートをのせておきます。ちなみにこれはGSMC(GTK Smith chart caliculator)というソフトで描きました。実行環境はcygwin(X11)です。

GPS_recommended.gifGPS_redesigned.gif
推奨回路(左)と自己設計(右)。

ということで、できた物の写真をあげておきます。基板はOlimexで作りました。

gps_chip_antenna_revB_board.jpg

で、結論ですが、u-blox LEA-4Tで試してみたところ、受かりませんでした。恐らくゲインがまだまだ足りないのではないかと思います。うまく受かるアンテナのスペックをみると大体25dBを超えていますが、MAX2641 1個での性能は15.7dBなので、よりゲインの高い、例えばNEC uPC8215TU(リンク先はPDF)を使う、あるいはアンプを2段にするなどが考えられます。

断っておきますが、使用している部品に非は全くないと思います。MAX2641をはじめコンデンサやインダクタはRF対応品のまともなものを使用していますので、ひとえに設計者の能力不足が根本的な原因であることは間違いありません。あとの要因を強いてあげるとすれば、本来このような用途向けではないOlimex基板を利用していることが、それなりに影響しているのだと思います。

アマチュアではそろそろ限界なので、次回LNAをよりゲインの高いものに換えてもだめなようでしたら、この計画は諦めようと思います。たとえ諦めたとしても、最後にどこかでネットワークアナライザが借りられれば、大変有益なフィードバックが得られると思います。

※その後、Takeyasuさんにアンテナの特性を解析していただきました。

October 26, 2007 00:43 fenrir が投稿 : 固定リンク | | このエントリーを含むはてなブックマーク

コメント

高周波回路といえば、最近はP板.comでインピーダンスコントロールな基板が作れるようになったので、一度試してみるとよいかもしれません…。

Posted by: odawara : October 26, 2007 11:29 AM

>odawaraさん
情報どうもです、P板の見積りで遊んでみました。インピーダンスコントロールは4層からで、やはりそれを指定すると少量ではかなり高くなりますね。大量生産一度はしてみたいですが、そんな需要もないと(笑)

Posted by: fenrir : October 27, 2007 06:49 PM

チップアンテナのGND側の処理に問題があるような気がします。データシートでは明示的に書かれていませんが、フィードと反対側のパッドはGNDに落として、かつ、アンテナ実装の裏側パターンはGND面(グラウンド・プレーン)を形成しないといけないのではないでしょうか?

アンテナ単体でも、LNA付きでもアンテナ素子の裏面にGND面が無いのが気になります。手っ取り早くは、銅テープでも半田付けされてみては如何ですか?

LNAのゲインですが、10dB低くても大丈夫だと思います。今、自宅設置のGPSのフィーダにアッテネータを入れてレシーバ入力レベルを下げてみましたが、十分にロックしています。所謂LNAゲインとしては、15dB相当ぐらいだと思います。

ご参考まで。

Posted by: takeyasu : October 28, 2007 07:16 AM

すみません、前半のGND面に関するコメントを取り下げます。私の間違いです。データシートのEmptyとある部分は、GND面を無くしたエリアなのですね。指向性パターンを見ても、PWBの裏面にも指向性があることから、PWB裏面にGND面がないことが判りました。
このアンテナはパッチ系ではないのですね。

Posted by: takeyasu : October 29, 2007 12:03 AM

>takeyasuさん
コメントどうもありがとうございます。リンク先を見せていただきましたが、色々なアンテナを作られているのですね。この世界は形がモノをいうので、奥の深さを思い知らされます。
現在、他のチップアンテナも色々とデータシートを見て回っているのですが、GNDとアンテナの距離をもう少し大きくとったほうが良いのかなという気がしています。あと配線がクネクネしているのもかなりの問題な気がしています。とりあえずは現在簡易的な銅版グラウンドプレーンを敷いて試験をしているものの、アンテナ基板との固定が緩いのでそれを解消して再試験してみようと思います。

Posted by: fenrir : October 29, 2007 11:48 AM

パッチ系と思ってGND面についてコメントしたのですが、大ハズレでした。GNDプレーン追加は逆効果です。

いろいろと調べてみたのですが、このチップ・アンテナは線状アンテナ系で微小ヘリカルアンテナのように見受けられます。そうすると、現在の配置よりも90度回したほうが良いように思います。

RF系のパターンですが、マイクロストリップラインと同一面のGND間隙間が狭すぎます。マイクロストリップライン+コプレナ的となって、ラインのインピーダンスが下がっているでしょう。概略の目安として中心導体の幅の3倍は隙間をあけると、マイクロストリップラインの理想的な設計に近くなります。

アンテナ込みで指向性とかゲイン、発振の有無などを測定しましょうか? 会社からの帰宅途中に立ち寄っても良いですよ。N須加さんの研究室近くですか?

Posted by: takeyasu : October 29, 2007 01:02 PM

>takeyasuさん
同じ建物の4Fに生息しています(笑) お言葉に甘えてしまってもよろしいでしょうか。あとのやり取りはメールにてということで…

Posted by: fenrir : October 29, 2007 01:53 PM

ご使用のアンテナはモノポールタイプのようですので、より良いアンテナ特性を得るためには、基板の長さが1/4λ以上(約50mm)あると良いでしょう。この時、アンテナは基板のコーナーに設置すると円偏波に対し、若干ですが、指向性を持つようになります。

Posted by: Tony : January 9, 2008 10:12 PM

>Tonyさん
アドバイスありがとうございます。模型飛行機に搭載することを考えて、基板のサイズをできるだけ小さくしたいがために、このような形になりました。足りないグラウンドプレーンは銅版で補うつもりでした。

Posted by: fenrir : January 11, 2008 07:37 PM

小型化目的にはパッチアンテナはとても良い性能を持っているのですが、、、パッチタイプなら、今の基板サイズのままで十分ですし利得も円偏波で0~5dBiあり、現在のアンプ利得で十分だと思います。又、アンプの利得を上げすぎると、発振しやすくなりますので、設計がより難しくなると思います。
ちなみにモノポールアンテナ利得は円偏波では、-3dB低下します。

Posted by: Tony : January 11, 2008 10:57 PM

>Tonyさん
親切に色々と教えていただきありがとうございます。
パッチアンテナも当初検討しましたが、パッチアンテナではそのパターンがモノをいうので、性能を出すためには設計技術は勿論のこと、電界強度シミュレータや精度の良い基板製造設備等が必要になると思います。残念ながら僕はそのどちらも持ち合わせておりません。そこで市販のチップアンテナが利用できないか、検討してみた結果です。
またパッチアンテナを利用するにしても、ケーブルを30cmから40cm程度引き回して受信機に入力する必要があった(翼端に設置)ため、ケーブル損失を考えるとLNAを傍におく必要があると思われます。

Posted by: fenrir : January 12, 2008 01:05 AM

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