ハッブル宇宙望遠鏡
人工衛星を用いたミッションで最も成功したといえるハッブル宇宙望遠鏡ですが、巷で言われているように延命治療を施すことなく寿命をもって運用を終了することに決まったようですね。気になったので色々と調べてみました。
ハッブル宇宙望遠鏡(以下、HST)が打ち上げられたのは1993年のことで、現在までに4回の性能向上等の改修ミッションを経ているそうです。その間にHSTがあげた成果は凄まじく、例えば宇宙が拡大し続けていることを証明する証拠を捕らえたのもこのHSTです。また学問的成果以外にもHSTは地球からはるか離れた世界を映し出し感動を与えてくれました。
現在においてもHSTの有効性は損なわれることなく、地球上に設置された望遠鏡に比べはるかに鮮明な画像を提供してくれています。しかしながら人工衛星には寿命があり、HSTもその例には漏れず、ジャイロ(姿勢の検出に必要な機構)やバッテリー、FGS(Flight Guidance Sensor、観測の際に必要)が寿命をむかえようとしています。これらの機器は冗長系を積んではいるものの、早い場合には2006年の半ばにミッションを行うのに十分な性能が得られなくなるようです。
そこで今回の延命治療を行うか否かという問題に直面するのですが、方法は2つ考えられました。1つは無人の改修ロボットを派遣する方法で、もう1つはスペースシャトルを用いて宇宙飛行士の手による方法です。
まず前者ですが、このようなプランが第一に議論されるのはこの前のコロンビア号(スペースシャトル)の事故によって、あまり有人ミッションを行いたくないという考えがあるようです。無人であれば人的被害がでることはないので、この方法が取れるのならこれがベストでしょうが、HSTはロボットが改修すること念頭において作られた人工衛星ではないため、それをロボットで改修するための技術レベルはかなりのものが要求され、非常にリスクが高くつくことになるようです。またこの方法の場合、予期せぬ事態に対しての対応がとれず、最悪の場合改修どころか破壊をしてしまう可能性もあるようです。
第2の有人による方法ですが、過去の改修が全て有人で行われたこと、また作業の安全性としては国際宇宙ステーション(ISS)のものとあまり変わらないことから考えて、前述のロボットによる方法よりも成功する確率ははるかに高いと考えられているようです。しかしながらコロンビア号の事故もあり有人ミッションには危険性を考えなければなりません。
以上の2方法について、HSTの有用性と改修ミッションのリスクをトレードオフした結果、HSTを現在の寿命をもって運用を終了することに決定したようです。
おまけですが、2011年にはHSTの後継としてHSTの6倍の鏡面積をもつJames Webb Space Telescopeが打ち上げ予定のようです。HSTの延命治療が行われないことになったのは残念ですが、少しの空白期間の後にこの後継機によってより鮮明な画像や新たな発見があることに期待をしたいと思います。
メインソースは改修ミッションに関する調査委員会の最終リポート、ならびにHSTの改修ミッション取りやめに関するFAQです。
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