March 26, 2006

Love 日本

国家の品格
ミリオンセラー本、『国家の品格』を母の薦めで読んでみました。その書評と感想です。

全体的な紹介すると、現代の日本を憂える筆者が、日本という国家が現在どのような状態にあるかを見つめ、それに対して疑問をなげかける形で文章が展開されていきます。なかなか巧妙な作りの文章で、一方的に日本人としてはこうあるべきだ、という押し付け論ではなく、日本人が本来もっているものはこんなもの、あんなものではないか、と読者自身の内面を見つめさせようと細かな配慮がされています。それによって、自分が日本人としてどうあるべきか、日本が国家としてどうあるべきか、ということを考えさせるというのが筆者の狙いのようです。

筆者は、現在の世界にはびこる、自由や平等、そして論理といった概念に対して、それだけが全てではないだろ、と疑問を投げかけています。全くその通りだと思います。僕が思うに、これらの概念を使ってあえていうなら、自由とは権利でなく、自由を享受する責任という義務を果たさなければならないわけで、平等は不平等が存在してこそ成り立つものであり、そして論理は情には勝てません。何かあったときに『それがどうした』といわれれば、こちらも情をもって闘うしかありません。
本の中にある言葉を引用するならば、究極的には全ての原点は『ならぬものは、ならぬのです』、その言葉に尽きると思います。概念を導入して、それしかないと信じこんだ時点で負けなのではないのでしょうか。多くの議論に見られるような、枠組やルールを定義した上で論戦をはるのは楽しいですし、やり終えたときには結果は良し悪しの2通りの評価しかないためわかり易いです。しかし世の中そんな甘くないぞ、物事すべては灰色で混沌に満ちているんだぞ、と。

そのような白黒はっきりつけたがる欧米的な指向に対抗するために、筆者は特に日本的な様式美、道徳といったものを強調しているように思えます。美とは微妙で繊細なものであり、一概に良し悪しを決定できるものではありません。道徳も臨機応変に実践しなければ、その真価は得られないものです。欧米的な剛の指向で空いた隙間を、日本的な柔の思想で埋めてやることこそ、日本が日本たれると筆者は主張しています。柔良く剛を制す、とはよく言ったもので、理詰めで考えさせられることの多い日常生活を送っている僕としては、とてもはっとさせられました。

筆者は最後にまとめを兼ねて日本が日本であるための提案をいくつかしていますが、僕も日本人の一員として、また、将来の日本が自分にとって好きな国であり続けられるようにという願いを込めて、一つの提案をここでしてみたいと思います。
日本が日本的であるためには、筆者も本文中で述べているとおり、日本人はもっと日本の文化を知らなければならないと思います。日本の文化を知る方法は、古典や歴史書を読んだり、名所を訪れたり、と色々な方法があると思いますが、その他に僕が最も優れていると思う方法があります。簡単です。多くの日本人と会うこと、特に年上の日本人と会うこと、ただそれだけです。より多くの日本を感じるためには、日本に対する色々な見方が必要です。そして特に年長者は長く生きているだけあってより多くのことを感じているでしょう。そこからは必ず日本的な何かが得られるに違いないと僕は信じてやみません。

23:18 fenrir が投稿 : 固定リンク | | このエントリーを含むはてなブックマーク | トラックバック
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コメント

「日本の文化を知る方法」として、もうひとつ挙げたいのが、「外に出ること」。
日本の中にいると、内側からの視点でしか物を見れない。海外に出て、時には楽しい思いをし、時には不快な経験をして、日本との違いに気付く。日本に住んでいれば当たり前としか感じなかったことが、実は当たり前ではなかったりします。

Posted by: おの : March 27, 2006 03:46 AM

おのさんは一度、国家の品格のまえがきだけ立ち読みされたらと思います。

Posted by: kuroda : March 29, 2006 12:50 PM

>おの
海外にいるから本を入手かどうかわかりませんが、この本は手っ取り早くいってしまうとアンチ海外的な発想です。従って君の主張は実はこの本の趣旨とかなり相容れないということだけ断っておきたいと思います。

>korodaさん
コメントありがとうございます。おの君の状況をご理解いただけると幸いです。

Posted by: fenrir : March 29, 2006 02:23 PM
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