November 23, 2006

『若者はなぜ3年で辞めるのか』を読んで

若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来

つい先日まで海外に出張していましたが、海外でぼーっとできる時間がそれなりあるだろうと思い(実際はあまり時間がありませんでした)、日本を経つ際に数冊和書を購入して出かけました。今回はそのうちの一冊『若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来』についての書評・感想を残しておこうと思います。
ちなみに他は『女子高生、リフトオフ!~ロケットガール(1)』『世界の日本人ジョーク集』です。『ロケットガール』についてはそのうち感想を書くつもりです。

以下、長いので続きをどうぞ。

はじめに本の概要を一言でいってしまうと、『年寄りは既得権にしがみつき若者を搾取する現状を打破せよ』という内容のお話です。ということで、この記事の以後の内容についてお気を悪くされる方がたくさんいらっしゃると思いますが、そういう内容の本ですので諦めてください。

この本ではタイトルのあるとおり、若者がなぜ3年で会社を辞めてしまうのか、ということを話の発端としています。このテーマは僕自身非常に関心がある部分だったので、この本を購入するきっかけになりました。メディアが煽っているだけの気もしますが、ニート問題なども含めて若者の離職率が高いという話を最近非常に耳にしていたからかもしれませんし、自身の進路に多少なりとも関係しているからかもしれません。
この本によると、その若者が辞めてしまう最大の理由は、企業が新人に求める内容が変化したからとのことです。昔は白無垢で何も癖のない何でもやります的人間が求められていたようですが、最近は自分の専門性を生かし即戦力として使える人材が欲しいというように変化したため、企業と新人との間でギャップ生じやすく辞めてしまう人が多いのではないかと考察しています。採用担当者にいわせると辞めていく人間は我侭だそうですが、だいたい新人がすぐに使えると考える方に問題があると思います。どうして教育にコストを裂かないのでしょう。

そのような切り口をもとに筆者の論理が展開していきます。このような体制に移行した理由は旧来の日本の企業の特徴であった年功序列制度の崩壊が最も大きく寄与しているようです。
自分の会社人としての人生が保証される年功序列制度は、経済成長、少なくとも現状維持を前提とした上で成り立つシステムであり、日本が不況に陥ってからこのシステムが事実上機能しなくなったことを指摘しています。不況を乗り切るには誰かが泥をかぶる、つまり支出を圧縮しなければなりませんが、年功序列制度では年上の方ほど権力が配分されているので、ここでは若い人が泥をかぶることになります。
具体的にいうならば、企業はどのような対策を採ったかというと、就職氷河期と呼ばれた新卒の大幅採用減であったり(労働力は賃金の安い派遣や契約社員で賄う)、賃金を抑えるための名ばかりの成果主義の導入(勤続年数に応じて賃金を無条件に上げる必要はなくなる)等でした。これで若い人に優しくない企業となります。若い人の中には逃げだす人もいるでしょうし、我慢して会社に残ったとしても将来に希望をもてなくなる。一度年功序列制度が崩壊しだすと止まりません。悪循環がはじまり組織は老朽化し、ついには死んでしまいます。
実はこれは企業問題に留まりません。若い人の元気がないと国力が低下します。現に少子化問題はこの国の行く末に暗雲を立ち込めさせています。

このような状況の打開策を考えるにあたって、筆者は年功序列制度のシステムとしての良し悪し、そして年功序列を好む、つまり『普通であること』を是とし競争を内面では否定する日本文化の体質をあげています。高校生アンケートで3割が公務員になりたいというのには、さすがに苦笑いです。このような事実に基づいて、結局のところ筆者の結論は、悪いのは年功序列を前提とする社会であり、その枠組みにとらわれない生き方があってもよいではないか、というところで落ち着いています。

ここからは僕の感想です。
本の内容そのものについていうと、話をわかりやすくするために年功序列の有無という二項対立で最終的に考えることはよいことと思いますが、これくらい過激なことを言わないと立ち直れないくらいこの国は疲弊しきっているということでしょうか。残念に思えて仕方がありません。せっかく灰色的判断を是とする日本なのですから、もう少しひねった結論があってもよいと思います。結論以外については面白かったです、すらすらと読めました。

この本を読んで非常に興味深かったのが、僕が企業に対して思っているイメージはかなりずれているのではないか、と気づいたことです。僕、あるいは僕の周りの仕事仲間は、『企業は社員を幸せにしない』と考えている人が多いです。年功序列であれ、会社はその社員の一生涯を幸せなものにしてくれるとは考えていません。本書の最後のほうで指摘されていますが、会社に勤める目的とは究極的には生活するためのお金を稼ぐことであって、それは至極当然だと考えています。会社には自分の時間を切売りして、その対価をもらっているだけに過ぎないと思います。
仕事に対する価値観も違っているかもしれません。仕事を生きていくお金をもらうことと定義するなら、仕事とは『人がやらないことをする』『嫌なことをする』のどちらかしかないと思います。楽しい仕事というのは存在せず、むしろ楽しいことを仕事にしたらそれは既に楽しくないことだと考えています。趣味を仕事にはしたくありません。

最後にですが、今後の少し先の進路について考えてみました。まったくどうなるかわかりませんが、いちおう会社に依存しないビジネスモデルも考えてみてはいます。いわゆる有名税というやつです。会社に頼ることなく、個人の名前で生涯仕事ができれば僕の性格的にあっているのではないかと考えています。

20:35 fenrir が投稿 : 固定リンク | | このエントリーを含むはてなブックマーク | この記事をdel.icio.usでブックマーク | トラックバック
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コメント

>若者はなぜ3年で辞めるのか
本の内容を無視して書けば、何の将来目標も無く、とりあえず周りの雰囲気に流されるがまま学校に通って進学し、卒業して就職する段になってから自分の職について考え、知名度や企業規模など安易な尺度だけで会社を選んで就職し、「何かが違う」と辞めてしまう、そんな若い人が増えているからだと思います。どう生きたいか、どんな人間になりたいか、どんな仕事がしたいのか、これについて早い段階で考える必要性に気付かず、機会や材料も十分に与えてられていない若い人が、成果主義が叫ばれ、自己実現できる人間が望まれる社会の壁にぶつかる、これがNEETやフリーター、第二新卒の増加につながっていると考えています。増加の背景は、個々の親や学校などの"教育"の良し悪しに依存していて、社会全体として子供を正しい方向に導く体制が敷かれていないところにあると捉えていますし、今社会問題として注目されているイジメ問題も全く同じ背景から生まれていると思っています。

社会のシステムとしての年功序列が、良いか悪いかの二択で判断できるとも思えません。世の中には年功序列の枠の中で実力を出せる人、成果主義の枠の中で実力を出せる人の両方が居ると思われるため、働く側が選択できる状況が正しいと思いますし、個々の企業としては年功序列か否かをポリシーとして安定して維持することが重要で、世の中の流れで安易に成果主義に切替えたり年功序列に戻したりすることは、実力を出せる場として選んだ人間を活かせなくなる良くない行動だと思います。

>会社には自分の時間を切売りして、その対価をもらっているだけに過ぎないと思います。
という考えは働く人間の基本としてドラッガーの本などを通して社会には広まっていますが、若い人にはプロ意識が育っていない、時間の重要性に気付かない、自分からは動けず与えられなければ何も出来ない人が増えているのではないでしょうか。自分の中に自身で考えた夢・目標と計画があって当然、社会の中で自分が報酬を得る場所を自分の力で獲得することは当然、学校を出ても自分のために勉強を継続することは当然、という考えを持つ人が増えるような教育が必要だと思います。

Posted by: hoge : November 24, 2006 01:03 AM

>会社には自分の時間を切売りして、その対価をもらっているだけに過ぎないと思います。

必ずしも、そんなことはないと思うよ。
生きるために金は必要だけど、もし金が有っても俺は仕事をやめないと思う。
仕事をして、それが成果になって、世の中に出て、評価されて、身近な人に喜んでもらえる。そんな仕事ができたら、最高にハッピーだ。やりたい事をやりたいようにやって、それで周りに喜んでもらいたい。そんな仕事が出来るように、今は腕を磨いているよ。
会社は俺に「やりたい事を実現する環境」、「多くのプロと知り合うチャンス」、「能力も伸ばすチャンス」を与えてくれる。だから俺は、今の会社が好きだし、仕事もすごく楽しいよ!

要は前向きで見るか、後ろ向きで見るか、なんじゃないかな。

Posted by: iga2 : November 24, 2006 07:51 AM

仕事とは社会と関係することであり
給料はその結果の一つだとシンプルに考えております。

会社というのは集団の力で仕事をして
いるだけ社会へ大きな影響を与えやすく
すでに存在している会社にはいることは
今まで社会に関係してきた仕組みを
そのまま使うことができるだけとってもお得。

若者は搾取されるものですが
人生を長いスパンで見て取り返せる算段があるのなら
勉強料として支払ってやる位の心の余裕がほしいものです。

といっても会社内のシステムがひどいのはどこも同じで
仕事をしただけ馬鹿を見る会社が多いのも事実。

そんな会社にあたってしまい
その会社を自力で変えないのなら
事実に目をつぶり耐え続けるか
労働力の流動性を生かし会社を辞めるか。

どちらにしてもハッピーな人生を。

Posted by: PRA : November 24, 2006 08:48 AM

ひじょーに心が痛む話なわけですが、fenrirさんの意見には賛成です。なんというか、同じ世代だなぁと感じた文章でした(もちろん世代だけでは言い表せませんが)
僕も会社に就職してそろそろ1年が経ちますが、あまりにも予想通りの構図に、だんだんとテンションが落ちてきました。3年と言わず、そろそろ動き出さないと危ないですね。過ぎた時間は取り戻せませんから。
今後のfenrirさんの動きには多くの期待を寄せつつ、僕自身も頑張るという方向で(^^;

Posted by: odawara : November 24, 2006 10:29 PM

どーでもいいけどこの筆者、わたしの同期みたいだよね...

一緒に仕事してた人が会社を辞めたとき、ああこの人は会社辞めればこの仕事から離れられるんだなというのがすごく新鮮に感じました。
わたしは会社クビになってもやってる仕事がついてくるからね!(笑)

Posted by: shig : November 25, 2006 07:57 PM

>hogeさん
>社会のシステムとしての年功序列が、良いか悪いかの二択で判断できるとも思えません
感想で書いているとおり僕も年功序列は一概に悪い制度だと決め付けるのはよくないことだと思います。
>若い人にはプロ意識が育っていない、時間の重要性に気付かない、自分からは動けず与えられなければ何も出来ない人が増えている
これはかなり手厳しいご意見だと思います。時代の要請というやつでしょうか。昔は何がやりたいか具体的にわからないまま社会にでて、気が付いたら(何らかのプロフェッショナリティを身に着けつつも)定年まで会社にいたという人はかなりいると思います。それよりも会社が若手を育成する余力や自信をなくしつつある現在を僕は危惧したく思います。

>iga2
自分の給料を時給換算しださないうちは心身共に健全だと思います。そう思えるなら非常に恵まれていると思うよ、また年末にでも。

>PRAさん
ご意見どうもありがとうございます。全体像として語ることの危険性は十分に承知しているつもりですが、まだまだ至らないところが自分でもたくさんあると思います。年上の知り合いが多い僕は非常に恵まれていると思います。

>odawaraさん
期待されても何も出てきません(笑)。いや自身の問題としても非常に深刻なので、お互いがんばりましょう。そうそう、こないだの展示会ではこちらの都合でお会いできなくて申し訳ありません。こちらにいらした時は是非連絡してください~

>shigさん
同期ですか、知り合い多いですね。死ぬまで共に仕事しましょう(笑)、できる限り協力は惜しまないつもりですよ。

Posted by: fenrir : November 26, 2006 11:17 PM
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