2.現在までの研究状況 現代社会における機械システムのモニタリング技術は重要である。 これは、機械システムが高度に複雑化し、それに伴い安全を確保することが以前にもまして困難になったためである。 しかしながら多くの理由で、安全を最重要視する航空機と比較して、他システムではそれらの技術は採用されるに至っていないことが多い。 実際、2005年12月におきたJR羽越線の強風による脱線事故において、計測機器の未設置により原因究明が遅れたことは記憶にあたらしい。 そこで申請者は、航空機のモニタリング技術を他システムへ転用することを考慮し、現在までに以下のような研究を行った。 『MEMSセンサを用いた低コストINS/GPS複合航法システム』 (研究背景) 航空機を飛行させるにあたり必要な情報の一つとして、機体の位置や速度、姿勢といった航法情報がある。 従ってどのような航空機にも、この航法情報を取得するための機構である航法システムが装備されている。 この機構を他システムに適用することができれば、航空機以外のモニタリング技術として応用することが可能となる。 先の電車事故を例にあげるなら、この機構が搭載されていれば、車体が事故時のどのような運動をしたか、 またその結果から車体に対してどのような外力が加わったかを詳細に知ることが出来、原因の究明に多大に貢献できたに違いない。 そこで本研究では航空機の航法システムの転用を目指し、 航空機で培われた航法システムの一つである、INS/GPS複合航法システムに着目した。 これはINSとGPS、2つの航法システムを組み合わせたものである。 INSは加速度を積分すると速度に、速度を積分すると位置に、また角速度を積分すると姿勢に、 といった運動の法則を応用したシステムであり、 加速度や角速度を慣性センサと呼ばれるセンサで検出し、演算を行うことによって、 位置・速度・姿勢を出力するシステムである。 一方、GPSは地球を周回する衛星から電波を受信し、現在の位置や速度を出力するシステムである。 INS は自己完結的なシステムであり高い更新周期を実現できるが、その精度は使用時間とともに低下する。 一方GPSは高い精度をもつが更新周期は低く、また衛星を補足できる環境にある必要がある。 そこで両者を統合し、できうるかぎりの自己完結性と高い更新周期・精度を両立させようとしたのがINS/GPS複合航法システムである。 だが、既存のINS/GPS は性能を最優先したため、特注部品を用いて構成されることが多く、 その価格は安価なものでも数百万円である。 精度を多少犠牲にしてもINS/GPS が従来よりも遥かに低価格で実現できれば、 先述の事例以外にも多くの分野でこのシステムが活用されるであろう。 そこで本研究では低価格な部品でINS/GPS を構成し、その精度について検証した。 (問題点) しかしながら、既存の INS/GPS複合航法システムは航空機や人工衛星といった特殊な対象でしか用いられることはなかった。 これはこのシステム 精度を最優先に追求したためにという問題点 (解決方策) (研究方法) (特色) (独創的な点) 『高信頼性・高精度な協調型の航空機航法の構築』 3.これからの研究計画 (1)研究目的(600字) 慣性航法 衛星航法 機器の多重化 計器着陸装置(ILS) 自動着陸装置(ALS) 天候、気象、濃霧、降雪時 航空路線の過密 CAT-3 国際民間航空機関(ICAO) 日本の航空管制は遅れている 抜本的な改革が必要 衝突回避 事故機・故障機 管制間隔の短縮 今日における世界的な航空輸送の需要の増加・多様化にともない、航空輸送の大容量化が叫ばれている。 これに伴い、飛行中の航空機間隔の短縮や、悪天候時等における計器飛行の許容範囲拡大など、 航空機にとってのいわば道路である空というリソースの有効活用を行うことが求められている。 しかしながら、これらの高効率化は航空機の飛行における安全が十分に確保されてこそ真に実現されるものであり、 その過程において高度化するであろう航空機の誘導・制御技術に耐えうるだけの高信頼・高精度な航法が確立される必要がある。 ここで航法と述べるものは、自機の位置や速度・姿勢といった基本情報の測位、 加えて他機との相対距離などの応用情報の推定をさすものである。 本研究では、さらなる航法の高信頼化・高精度化をめざし、 複数機によって強調的に航法能力を補強する方法の獲得をめざす。 これは、従来から行われてきた航空機単体の航法機器の多重化や複数の航法機器の統合を補強するものである。 (2)研究内容(1000字) 協調型絶対測位システムの構築 協調型相対測位システムの構築 信頼性ならびに精度の定量的評価 (3)年次計画(800字) (1年目) 複数航空機のモデル化 アルゴリズムの検討 (2年目) シミュレーション (3年目) まとめ 小型無人機を複数機用いた模擬実験 (4)研究の特色(800字) 実験を行う 5.自己評価 @研究職を志望する動機、目指す研究者像、自己の長所等 私は社会に対して何らかの形で貢献をしたいと考えており、 社会全体を変革するほどの貢献をできる可能性があるのは、研究者をおいて他にないと考えている。 そのため、将来の進路として研究職を志望したいと考えている。 特に私が現在、専攻している航空宇宙分野の現場では、 安全や信頼という指標を第一に技術的な評価がされるため、 過去からの実績が蓄積されたいわゆる『枯れた技術』が未だに多くの製品で採用されているように見受けられる。 従って、優れた技術が研究によって開発されても、それが採用されることはあまりない。 例をあげるなら、民間航空機の制御技術では現代制御理論が用いられることはあまりなく、 PID制御のゲインスケジューリングといった古典制御によって構成されていることが大多数である。 研究により、これら新しい技術の信頼性が十分であることを実証できれば、 航空宇宙の産業を、ひいては社会を変革することが可能である、と私は考えている。 そのような点において航空宇宙工学の研究者としての進路を選択したいと考えている。 以上述べたことを鑑みると、自ずと目指す研究者像も見えてくる。 (1)社会と積極的に関わり、社会が抱える潜在的な問題点を見抜くことが出来る研究者 (2)発見した問題に対し、現実に即した仮説の上での解決策を提案することができる研究者 (3)研究の方法としてシミュレーションのみならず、実証することに重点を置く研究者 以上述べた目標とする研究者像に対して、私は以下の点で優れていると考える。 私は社会が航空宇宙工学への要求として 研究者 現実の要求として課せられる信頼性を研究において十分立証することではないだろうか。 私はそのような意味において、航空宇宙工学における研究によって 航空宇宙産業に、さらには社会全体に貢献できるものと考えている。 私が研究者として 現代においては全ての事象が複雑化しているため、システムとしての社会は 多くの人や物、時間といったリソースが関与することによって成り立っている。 しかしながら、それらを有機的に結合させ加速させる者がいなければならない。 社会的に重要な問題を発見・解決し、 が動機は、私が社会に対して何らかの貢献できる 者こそ 研究者であると考えるからである。 に違いないと 近年インターネットの普及により、誰もが情報の氾濫による被害を受けている。 専門家として信頼されるようになりたい。 社会的なインパクトを最も与えられるのは研究者である。 社会と積極的に関わり、社会全体をよりよい方向へと導く研究者 自己の長所 興味を持ち出したらとことん突き詰める 実証を第一に考え、積極的に手足を動かし行動する A自己評価する上で、特に重要と思われる事項(特に優れた学業成績,受賞歴,飛び級入学,留学経験,特色ある学外活動など) IPA未踏ソフトウェア アウトリーチ