March 03, 2006

『ウェブ進化論』と『攻殻機動隊』

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる
仕事の関係でお世話になっている、かつ人生の先輩であるA氏から、最近出版された『ウェブ進化論』という本を読むとディジタルディバイドがいかに深刻かがわかるよ、ということを言われたので読んでみることにしました。『ウェブ進化論』は日本の有名ブログ『英語で読むITトレンド』をされていた梅田望男さんが書かれた本です。この記事はその本に関する感想です。

A氏の主張は、この本の主張を理解できるかどうかで読者のデイジタル的世代がわかるよ、ということですが、この本によると、その世代としてのは、次の3種類に大別されます。『Web上の不特定多数という量に可能性を見出し、そのアウトプットを信頼しようとする世代』、『Web上の不特定多数という量の可能性は理解できるが、そのアウトプットに対しては慎重であり、できるだけリアルな社会構造において問題を解決しようとする世代』、『特定のいわゆる権威的な意見にのみ信頼を寄せ、Web上における不特定多数の理論を理解できない、リアルな社会でしか生きられない世代』。3者は現状のWeb界の言葉でいうとそれぞれ『Web 2.0』、『Web 1.0』、『Web 1.0 未然』です。具体例として、日本の大企業の重役は『Web 1.0 未然』、Yahooやマイクロソフトは『Web 1.0』、Googleは『Web 1.5』とでもいうのでしょうか、『Web 1.0』の『Web 2.0』中間、ということが挙げられています。
実際、この本の言っている事を理解できる世代は限られていると思います。現状の社会における『意見が主張ができる者とは、結果としてそれで飯を食えるのみ』という事実から考えると、不特定多数の力というのは『Web 1.0 未然』の世代では全く理解が及ばないと思います。『Web 1.0』の世代でも苦しいのではないでしょうか。理解しない、驚異を感じる、等々そんな生易しいものではなく。どうして理解が及ばないのでしょうか。僕なりに考えてみることにしました。

この本ででてきた『あちら側』と『こちら側』という言葉は古くて新しい新鮮な響きです。本では現代の社会においてはリアルな世界を『こちら側』、Web上の世界を『あちら側』と表現していました。
『こちら側』と『あちら側』という言葉を用いるとすれば、太古なら自分の村が『こちら側』、隣の村が『あちら側』でしょう。それが経済活動の拡大に伴って、村が町に、そして国、リアルな社会全体になっていったのだと思います。自分にとっての『あちら側』の人と実際に会ったり、物品を交換しながら自分にとっての『あちら側』を『こちら側』に取り込むことによって、『こちら側』を広げていき、『こちら側』が現在のリアルな世界全体になったのだと思います。
ここでですが、いままでと同じ方法で現在における『あちら側』ことWeb上の社会を『こちら側』ことリアルな社会に取り込むことが可能でしょうか。それは無理だと思います。Web上の仮想人格(ここで仮想人格と称しているのはコンピュータの画面を通して得られる個人情報は結局のところリアルな人ではないから)に会ったり、Web上で生計を立てたりすることで、今までと同じ『あちら側』が『こちら側』になった感覚が得られるでしょうか。この感覚は今までのものとは違うのではないでしょうか。従ってこの感覚が『あちら側』が『こちら側』になったという意識をもっている世代しか現在の『あちら側』の力の源泉である不特定多数の力を理解できないのだと思います。

話が若干変わりますが、この本に対する考察をさらに深めてみようと思います。この本を読んでいて思い出したのが、『攻殻機動隊』という日本のアニメです。つい最近TVシリーズをやっていました。公安9課と呼ばれる未然にテロを防ぐという攻性的特殊部隊の話で、構成員は個々の力が最優先された組織構成という設定でした。
このTVシリーズの作品のなかで、テーマになっているのが『Stand Alone Complex』という言葉です。『我々にチームプレーという都合のよい言葉は存在しない、あるのは個々の活動が有機的に融合するStand Alone Complex、ただそれのみだ』確かそんな言葉を主人公が語っていたと思います。『Web 2.0』世界への対応をするためにはこの言葉に多大なヒントがあるのではないでしょうか。
結局これまでの不特定多数の力をそれほどまで意識せずに済んだ『Web 1.0』以前の世界では、『あちら側』を『こちら側』を取り込む際に何らかのチームプレーが発生しいたと思います。しかし『Web 2.0』の世界ではそのようなチームプレーが発生しないうちに『こちら側』が『あちら側』と溶け合っている、そんな世界なんではないでしょうか。つまり『個々の活動が有機的に統合される』ことが『Web 2.0』における『あちら側』が『こちら側』となる契機なのではないでしょうか。そして、『有機的に統合される』部分はWebを通じて自動的に行われるので、重要なのは結局のところ『個々の活動』であると思われます。
梅田さんは本の中において不特定多数の力をマクロ的に捉えていたと思いますが、『個々の活動』というミクロ的な視点があってもよいのではないでしょうか。僕は、貢献度が小さいにせよ、Webに関連した技術を裏で支えている一人だという認識が実際あります。そういう認識のもとでこの本を読むとマクロ的な視点だけでは『Web 2.0』を理解するとまで行かなくても触れてみるだけでも、少し物足りないのではないのかと感じました。そういう意味で梅田さんの個人的な『はてなへの転職に関する意志』のような記事が載せられていたことは非常に評価すべきことだと思いますし、このことに関した内容にもう少し紙面を割いていただきたかったという希望があります。

最後に梅田さんのサイトで、この本に関するブログ書評から言葉を、ということをされているようなのでキャッチフレーズでも考えてみようと思います。『Web世界という新しい"地球の歩き方"』なんていうのはどうでしょうか。

以上長文になりましたが、感想を述べてみました。

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